「今帰ったぞー。ちゃんと全員いるか?」
頼飛先生の疲れた声が部屋に響く。そして居間に入って来ると、俺達の表情を見て、驚く。
「おいおい!お前ら全員どうした!?顔が死んでるどころじゃねぇぞ!大丈夫か!?」
「あ……頼飛先生。おかえりなさい。俺達は大丈夫です。でも、話があるんです。疲れているところすみませんが、今大丈夫ですか?」
俺が言うと、頼飛先生は頭をかきながら溜息をつく。
「しょうがねぇなぁ。お前らのその顔見たら断れねぇだろうが」
「有難うございます」
「で?どうしたんだ?」
「実は………」
俺は今日あった事を頼飛先生に話す。頼飛先生は真剣な顔で最後まで話を聞き、そして俺達七人全員に向かって言った。
「とんでもねぇ事になっちまったな。じゃあ、もうそこの小学生四人組はあの事件の事知ってんのか?」
「いえ。俺達はまだ何も話してません。だから、あの事件と関係しているかもしれないというのは知りません。でも、確実に何か悪い事が起こり始めているのは皆感じていると思います」
「そうか。とにかく、襲われちまったなら仕方ねぇ。今はそこの小学生四人組にお前らからいろいろ分かってる事を話してやれ。じゃねぇと、話が進まねぇからな」
「分かりました。俺から話します」
それから俺は、夏休み前に郁人が見たもの、終業式で会った男の話、そして頼飛先生と事件の事について中1のメンバーで話した事を最初から丁寧に説明する。やっぱり小学生には少しきつい話だったのか、四人全員が言葉も出ない様子だ。いつもうるさい瑛凛と颯真も、怖いくらい大人しい。
話し終えると、頼飛先生が皆の顔を順番に見ながら言った。
「お前らが今日会ったそのイカれた奴は、郁人の見た奴と違ったんだよな?って事は、やっぱり裏で手を引いてる奴がいるって事だな」
「はい。それは確実だと思います。でもまだその黒幕の正体について何も掴めていないんです」
「そりゃあそうだろ。お前らは襲われて必死に逃げてきただけ。でもそれが一番賢い選択だ。死んじまったら元も子もねぇからな。悲しむ奴もいるだろ。で、こっからが問題なわけだ。俺はお前らの話を聞く限り、そのイカれた奴が自分で逃げきれるとは思えねぇ。実際に会ったお前らはどうだ?」
「俺もそうは思わねぇな」
「確かに。あれだけふらふら歩いてたら絶対誰かが気づくはずだし、遠くまで行けるとも思えない」
頼飛先生の疑問に郁人と万冬が同意する。だが、俺はそれよりも引っかかる事があった。
「でも、それじゃあ今まで起こった事件で、被害者が全員学生っていうのもおかしくないですか?」
「どういう事だ?」
「はい。俺達が今日見た奴、明らかに自分の意識がないようでした。まるで麻薬を飲んでおかしくなった人みたいな。そんな感じがしたんです。そんな奴が学生だけにターゲットを絞り込んで、しかも狙い通りに殺せるとは思えません。それに、颯真が逃げきれない程、力が強かったとしたら、それは確実にあのイカれた奴の力ではないと思います。俺と郁人が蹴った時、呆気なく倒れたし、かなり腕や足が細かったです。あれは誰が見ても、普通の学生の何倍もか弱く見えると思います」
「そう言われれば、前に俺が見た奴もかなり細かったわ。こいつ生きてんのか?ってくらいやばかったし。そういう面でもちょっと見てらんなかった」
「なるほど。でもそうだとしたら、かなり謎が増えちまう。蓮が言ったように、"麻薬を飲んでおかしくなった人みたい"っていうのは意外と合ってるかもしれねぇけどな」
「え?つまり、黒幕達は麻薬を使ってるかもしれないって事ですか?」
「いや。そうじゃねぇ。麻薬くらいだったらまだ可愛いもんだぜ?なんせ、狙い定めて人を殺すことなんざ出来ねぇからな。だが、今回は違う。イカれた学生共が同じ学生を、狙って犯罪を犯してやがる。しかも証拠どころか目撃者すらいねぇ。唯一、お前ら以外はな」
頼飛先生の言葉に、俺達は事の重大さを改めて実感させられる。すると、郁人が何かに気がついたように顎に手を当てて考える仕草をした。
「でも待てよ。俺と蓮と万冬だったら分かるけど、瑛凛と颯真が襲われたのはおかしくねぇか?追いかけてたのがバレたっつっても小学生だぜ?しかも、俺が前に追いかけた時は確実に気づかれてもおかしくは無かったはずなのに襲ってはこなかった」
頼飛先生は既に気づいていたようで、
「そうだな。俺が思うに、多分郁人の時は被害者がいたから狙われなかったんじゃねぇかと思う。でも今回は誰も襲われてなかったんだろ?」
瑛凛と颯真が座っているソファーを見ながら言うと、まだ少し青い顔をして、
「………うん………」
瑛凛が小さく答える。頼飛先生は深く溜息をついて、苦笑した。
「ははっ、いっつも元気なくせして今日はやけに大人しいじゃねぇか。ま、仕方ねぇな。今日はもうこのまま泊まってけ。全員な。家族には俺から連絡しといてやるから」
優しく笑う頼飛先生はきっと、瑛凛や颯真はもちろん、葵葉や蒼茉が家に帰って一人で怯える事がないようにそう言ってくれているんだ。それに、自然と話を終わらせてくれた。瑛凛や颯真や葵葉や蒼茉。四人の顔色があまり良くなっていないのが分かったから、これ以上は話さない方がいいと思ったんだろう。
「よし。じゃあ今日は全員で美味い飯でも食ってさっさと寝ようぜ。じゃないと、明日思いっきり遊べねぇしな」
「明日どっかに連れてってくれんのかよ?」
頼飛先生の言葉にいち早く反応したのは郁人だ。
「夏休みももう終わっちまう。だから最後はここにいる全員で夏祭りにでも行こうと思ってな。祭りの食いもんも、ちょっと値は高いがうめぇからな」
「食いもん目当てかよ!」
「俺達も行っていいのか?」
郁人が素早くつっ込むと、少し期待に満ちた顔をした瑛凛が、控え目に聞く。
「ここにいる全員っつったらお前らもだろうが。安心しろよ。ちゃんと奢ってやるから。明日くらいははめ外さねぇと俺もやってけねぇしな」
「よっしゃあ!」
「明日が楽しみだな。葵葉、蒼茉。また美味しいもんがたくさん食えるぞ。よかったな」
「うん。ありがとう、桜庭先生」
「ありがとう。桜庭先生」
「ははっ、お前ら急に元気になったんじゃねぇか?ま、その調子で明日も楽しめよ」
「桜庭って、意外と太っ腹なんだな」
「おい万冬!それはしつれーだぞー」
「おいてめぇら!人の事馬鹿にしてんじゃねぇよ!くそガキが!」
「うおっ!桜庭の奴キレたぞ!」
「逃げろ逃げろー」
部屋の空気が先程とうって変わって明るくなる。本当に凄い人だ。あれだけ、暗くて嫌な感じの雰囲気だったのに、もう今は瑛凛や颯真、葵葉や蒼茉の顔が安心と明日への期待で染まっていた。俺自身も、頼飛先生や七人全員で祭りに行けるという事に、とても胸が高鳴っている。早く明日が来ればいいのに。ついついそんな事を思ってしまう。もう少しで夏休みも終わりだ。
頼飛先生の疲れた声が部屋に響く。そして居間に入って来ると、俺達の表情を見て、驚く。
「おいおい!お前ら全員どうした!?顔が死んでるどころじゃねぇぞ!大丈夫か!?」
「あ……頼飛先生。おかえりなさい。俺達は大丈夫です。でも、話があるんです。疲れているところすみませんが、今大丈夫ですか?」
俺が言うと、頼飛先生は頭をかきながら溜息をつく。
「しょうがねぇなぁ。お前らのその顔見たら断れねぇだろうが」
「有難うございます」
「で?どうしたんだ?」
「実は………」
俺は今日あった事を頼飛先生に話す。頼飛先生は真剣な顔で最後まで話を聞き、そして俺達七人全員に向かって言った。
「とんでもねぇ事になっちまったな。じゃあ、もうそこの小学生四人組はあの事件の事知ってんのか?」
「いえ。俺達はまだ何も話してません。だから、あの事件と関係しているかもしれないというのは知りません。でも、確実に何か悪い事が起こり始めているのは皆感じていると思います」
「そうか。とにかく、襲われちまったなら仕方ねぇ。今はそこの小学生四人組にお前らからいろいろ分かってる事を話してやれ。じゃねぇと、話が進まねぇからな」
「分かりました。俺から話します」
それから俺は、夏休み前に郁人が見たもの、終業式で会った男の話、そして頼飛先生と事件の事について中1のメンバーで話した事を最初から丁寧に説明する。やっぱり小学生には少しきつい話だったのか、四人全員が言葉も出ない様子だ。いつもうるさい瑛凛と颯真も、怖いくらい大人しい。
話し終えると、頼飛先生が皆の顔を順番に見ながら言った。
「お前らが今日会ったそのイカれた奴は、郁人の見た奴と違ったんだよな?って事は、やっぱり裏で手を引いてる奴がいるって事だな」
「はい。それは確実だと思います。でもまだその黒幕の正体について何も掴めていないんです」
「そりゃあそうだろ。お前らは襲われて必死に逃げてきただけ。でもそれが一番賢い選択だ。死んじまったら元も子もねぇからな。悲しむ奴もいるだろ。で、こっからが問題なわけだ。俺はお前らの話を聞く限り、そのイカれた奴が自分で逃げきれるとは思えねぇ。実際に会ったお前らはどうだ?」
「俺もそうは思わねぇな」
「確かに。あれだけふらふら歩いてたら絶対誰かが気づくはずだし、遠くまで行けるとも思えない」
頼飛先生の疑問に郁人と万冬が同意する。だが、俺はそれよりも引っかかる事があった。
「でも、それじゃあ今まで起こった事件で、被害者が全員学生っていうのもおかしくないですか?」
「どういう事だ?」
「はい。俺達が今日見た奴、明らかに自分の意識がないようでした。まるで麻薬を飲んでおかしくなった人みたいな。そんな感じがしたんです。そんな奴が学生だけにターゲットを絞り込んで、しかも狙い通りに殺せるとは思えません。それに、颯真が逃げきれない程、力が強かったとしたら、それは確実にあのイカれた奴の力ではないと思います。俺と郁人が蹴った時、呆気なく倒れたし、かなり腕や足が細かったです。あれは誰が見ても、普通の学生の何倍もか弱く見えると思います」
「そう言われれば、前に俺が見た奴もかなり細かったわ。こいつ生きてんのか?ってくらいやばかったし。そういう面でもちょっと見てらんなかった」
「なるほど。でもそうだとしたら、かなり謎が増えちまう。蓮が言ったように、"麻薬を飲んでおかしくなった人みたい"っていうのは意外と合ってるかもしれねぇけどな」
「え?つまり、黒幕達は麻薬を使ってるかもしれないって事ですか?」
「いや。そうじゃねぇ。麻薬くらいだったらまだ可愛いもんだぜ?なんせ、狙い定めて人を殺すことなんざ出来ねぇからな。だが、今回は違う。イカれた学生共が同じ学生を、狙って犯罪を犯してやがる。しかも証拠どころか目撃者すらいねぇ。唯一、お前ら以外はな」
頼飛先生の言葉に、俺達は事の重大さを改めて実感させられる。すると、郁人が何かに気がついたように顎に手を当てて考える仕草をした。
「でも待てよ。俺と蓮と万冬だったら分かるけど、瑛凛と颯真が襲われたのはおかしくねぇか?追いかけてたのがバレたっつっても小学生だぜ?しかも、俺が前に追いかけた時は確実に気づかれてもおかしくは無かったはずなのに襲ってはこなかった」
頼飛先生は既に気づいていたようで、
「そうだな。俺が思うに、多分郁人の時は被害者がいたから狙われなかったんじゃねぇかと思う。でも今回は誰も襲われてなかったんだろ?」
瑛凛と颯真が座っているソファーを見ながら言うと、まだ少し青い顔をして、
「………うん………」
瑛凛が小さく答える。頼飛先生は深く溜息をついて、苦笑した。
「ははっ、いっつも元気なくせして今日はやけに大人しいじゃねぇか。ま、仕方ねぇな。今日はもうこのまま泊まってけ。全員な。家族には俺から連絡しといてやるから」
優しく笑う頼飛先生はきっと、瑛凛や颯真はもちろん、葵葉や蒼茉が家に帰って一人で怯える事がないようにそう言ってくれているんだ。それに、自然と話を終わらせてくれた。瑛凛や颯真や葵葉や蒼茉。四人の顔色があまり良くなっていないのが分かったから、これ以上は話さない方がいいと思ったんだろう。
「よし。じゃあ今日は全員で美味い飯でも食ってさっさと寝ようぜ。じゃないと、明日思いっきり遊べねぇしな」
「明日どっかに連れてってくれんのかよ?」
頼飛先生の言葉にいち早く反応したのは郁人だ。
「夏休みももう終わっちまう。だから最後はここにいる全員で夏祭りにでも行こうと思ってな。祭りの食いもんも、ちょっと値は高いがうめぇからな」
「食いもん目当てかよ!」
「俺達も行っていいのか?」
郁人が素早くつっ込むと、少し期待に満ちた顔をした瑛凛が、控え目に聞く。
「ここにいる全員っつったらお前らもだろうが。安心しろよ。ちゃんと奢ってやるから。明日くらいははめ外さねぇと俺もやってけねぇしな」
「よっしゃあ!」
「明日が楽しみだな。葵葉、蒼茉。また美味しいもんがたくさん食えるぞ。よかったな」
「うん。ありがとう、桜庭先生」
「ありがとう。桜庭先生」
「ははっ、お前ら急に元気になったんじゃねぇか?ま、その調子で明日も楽しめよ」
「桜庭って、意外と太っ腹なんだな」
「おい万冬!それはしつれーだぞー」
「おいてめぇら!人の事馬鹿にしてんじゃねぇよ!くそガキが!」
「うおっ!桜庭の奴キレたぞ!」
「逃げろ逃げろー」
部屋の空気が先程とうって変わって明るくなる。本当に凄い人だ。あれだけ、暗くて嫌な感じの雰囲気だったのに、もう今は瑛凛や颯真、葵葉や蒼茉の顔が安心と明日への期待で染まっていた。俺自身も、頼飛先生や七人全員で祭りに行けるという事に、とても胸が高鳴っている。早く明日が来ればいいのに。ついついそんな事を思ってしまう。もう少しで夏休みも終わりだ。

