スーパーヤンキー!!

「話すと言っても、別に何か知っているわけじゃないんだ。ただ、さっき会ったあの男には、何か恐ろしい程の殺気を感じた。それに、郁人と言い合っている時も、相手の怒った反応を楽しんでいるように見えた。俺はあの男と目を合わさないようにしたけど、一度目が合ってしまった。その時、確実に感じたんだ。言葉ではなかなか言い表せないけど、他人に言えないような、非道な事をしている感じが。俺はその場から離れたいと必死に思った。でも足が動かなければ、上手い言葉も浮かばなかった。それからは単純に気持ちだけが焦って、気持ち悪くなっていった。意識が朦朧とするのを必死で我慢した。絶対に悟られないように。そんな時、頼飛先生が助けてくれたんだ」


言い終えると、あの男を思い出して気持ち悪くなる。そんな俺の背中を郁人と万冬が優しくさすってくれた。


「蓮がそんな風に感じてたなんて全然気づかなかった。ずっとあいつの話を聞いて、イライラして、ただ、ムカついて言い返してた。蓮、ごめん」


「確かに俺も最初は全くそんな風に感じなかった。途中、怪しいとは思ったけど、単純に言ってる事が信じられなかっただけだったし」


郁人と万冬が言うと、頼飛先生は何を考えているのか、少し小さな溜息を漏らす。


「正直俺も、途中から見てたんだ。最近ここら辺で学生をターゲットにしたひでぇ事件が頻繁に起こってるからな。見張ってんだよ。白蘭の生徒達が怪しい奴に絡まれねぇようにな。そしたら案の定、お前らが変な男に絡まれてるのを見つけたわけ」


「だったら何でもっと早く助けにこないんだよ!」


「まあ聞けよ。俺だって初めから怪しいって思ってりゃ声くらいかけたわ。けどな、そう見えなかったんだよ。いや、あの男がそう見えねぇようにしてたのかもな」


「…………は?どういう事だ?」


「だから、周りからはあの男が怪しい奴に見えてねぇっつう事だよ。人に好かれそうな顔をうまく利用してやがる。俺が怪しいと思ったのだって、蓮が途中からだいぶ気持ち悪そうにしてたからだよ。ほんと、蓮はスゲェよ。大人でも騙されるような奴の顔を一度見ただけで怪しいって分かっちまうんだもんなぁ。それに、よく我慢したな」


俺は頼飛先生の優しい言葉に涙が出てしまった。それに気づいた万冬が、俺の顔を隠すように自分の方に引き寄せて、タオルを被せてくれる。


「じゃああいつは、俺達利用して白蘭の学生の情報を聞き出そうとしたってのか」


「それは分からない。ただ言えるのは、今頻繁に起きている事件の犯人も被害者達も、全て学生だという事だ。つまり、あの男が黒幕の可能性は否定出来ない。蓮が感じたっていう、非道な事をしてそうな感じは、それに関係しているのかもしれない」


「事件ってのは、イカれた学生が同じ学生を惨殺してるやつだろ。ったく。マジで勘弁だわ」


「何でそんな事知ってんだよ。それに郁人、お前さっきやばいとこ見ちまったとかなんとか言ってたが、まさかこの事件と関係あんのか?」


「関係あるも何も、最初に殺された女が殺されるとこを見たのが俺だよ。マジであん時は死にたい気分にすらなったぜ」


郁人が俺達に話したように、事件を目撃した事を全て話すと、頼飛先生は、とても驚いたような、「最悪だ」とでも言うような顔をしていた。


「……マジかよ。おい郁人、お前それ蓮と万冬以外の奴に言ったりしてねぇよな?」


「言えるかよ。あんな事思い出すのも嫌なんだ。それに、言ったら言ったでめんどくせぇ事になるだろ」


「そうか。ならいい。でもまずいな。実際に現場に居合わせちまうなんて最悪のし状況だ」


「は?何がまずいんだよ?別にこの事件の事ならテレビのニュースでも毎日のようにやってんだろ。死体だって見つかってんだから」


「確かに死体は見つかってる。でもな、誰が殺したとか、どんな奴が殺したとかは一度も報道されてねぇんだよ。毎度毎度見つかるのは死体だけ。犯人の目星は1ミリも掴めてねぇ」


「……つまりどういう事だよ?」


郁人が頭を捻っていると、今まで黙って聞いていた万冬が言う。俺も話だけはしっかりと聞く。


「だから、性別も、殺害に使われた道具も、何もかも不明な犯人を唯一郁人だけが見てしまったって事。それが犯人に知られたら次郁人が狙われるのは確実だ。しかも、犯人は学生を何人も惨殺しているのに、証拠を全く残してない。だからこそ警察も誰も犯人が分からない。それに、桜庭も言ってたけど、被害者は学生ばかりなんだ」


「………?」


「まだ分からないのか?ったく。じゃあ聞くけど、郁人が見た頭のイカれた奴が証拠も何も残さず、逃げきれると思うか?」


「いや、それは無いな」


「だろ?つまり、そのイカれた奴を後ろで操ってる黒幕がいるってわけだよ。しかも、黒幕は多分一人じゃない。相当な人数のはずだ。そんな奴に郁人の事が知れたらか確実に狙ってくる。つ捕まったら最後、生きては帰れないだろうな」


「………っ!」


郁人は、事件の被害者の事を思い出したのか、顔がだんだんと青ざめていく。すかさず頼飛先生が苦笑して郁人の頭を撫でながら言う。


「大丈夫だ。絶対俺が守ってやるよ。お前ら三人は俺の大事な生徒だからな。ぜってぇ傷つけさせねぇよ。でもま、さすがに離れたところにいられちゃあ守れるもんも守れねぇからな。明日からの夏休み、俺の家で毎日過ごせ」


「「「………は?」」」


俺達はびっくりしすぎて固まる。郁人も万冬も目を丸くして頼飛先生の事を見ていた。今年の夏休みは、いろんな意味で嵐になりそうだ。