早速、朝食を食べ始めようと椅子に座ると、翔子がどたどたと階段を駆け上がる音が聞こえた。5秒くらいして、また大きな音を立てながら降りてくる。手には大きなポーチを抱えていた。
「寒いから、炬燵でメイクしようと思って」
翔子はそう言い、迷わず炬燵に足を突っ込む。俺が諦めたことを翔子は当たり前のようにした。
「げ、電気付いてないじゃん」
最悪〜といいながら翔子はコンセントに手を伸ばす。
炬燵が付いたことを確認するとまた座り、化粧ポーチのチャックを開けた。
「スカート、皺になんぞ」
俺が言うと、翔子はいいのいいの、と気にしてない様子だった。


熱々のご飯を口に運びながら、妹の後ろ姿を見つめる。
翔子は中学一年生。まだ綺麗な制服は膝を覆いかくすくらい長いスカートと真っ白なハイソックスが印象的だ。スカートが長いため、ハイソックスとつながっているように見える時がある。
だが、制服があまりにも綺麗な紺色だからかどうしても翔子の金髪とは全く似合わなく、髪型だけ浮いていた。

「翔子、ちゃんと朝ごはん食べてけよ」
俺はシャツのボタンを締めながら言う。
はーいと、振り向かずに返事をした翔子は、鏡の中の自分に夢中だ。高い位置でポニーテールをしようとしてるみたいだがなかなかうまくいかないらしい。
女の子も大変だなと思いながら俺は自転車の鍵を手に取る。

「じゃ、いってきます」