寒さで目が覚める。
俺はベッドから降り、カーテンを開けた。


……あの日も、こんな空だった。

今日の空は、青色をおっきな綿菓子のような雲が隠した、真っ白の空。
どうしたって空には手が届かない。
なのに冬のはじまりの空は夏空よりもずっと近くに感じてしまう。
俺はうんと伸びをしながらベッドから出た。

リビングに降りると、昨日まではなかった炬燵が出ている。早起きの母さんが俺達が寝ている間に出したのだろう。
今日は昨日よりずっと気温が低い。

……はまりたい。あの暖かい空間に足を突っ込んでみたい。
一瞬そう考えたが、おそらく今炬燵に入ったら出られなくなってしまい、大学に遅刻する未来が安易に想像できた。家帰ってからの楽しみにしよう。

炬燵の反対側、右手のダイニングテーブルに目をやると、朝食が置かれていた。
納豆のパック、小皿に盛られたサラダ、目玉焼き。
そして、空っぽの茶碗が2つと、黒と白の粉が半分くらいの割合で入ったマグカップ。
それが2セットずつ、色違いのランチョンマットの上に綺麗に並べられていた。

母さんは俺よりはやく出かける。いつも俺と妹の朝食を作ってから出るのだが、ご飯と味噌汁とコーヒーは熱々が美味しいからってそれぞれ、入れ物だけを置いていく。
しかもマグカップには、あとはお湯を入れるだけで済むようにコーヒー粉と粉ミルク入りだ。