「璃壱、離れろ。」




そう言って璃壱の頭をペシッと叩くのは、蓮 時雨(はす しぐれ)。




指通りが良さそうなサラサラの漆黒の黒髪が特徴。




「いてっ」と声にだす璃壱を鋭い目つきで黙視する時雨。




…めっちゃ怖い、時雨君。




そして、これもいつもの事。




その時雨の視線に気づいているのかいないのか、璃壱は「嫌だー」と言ってさらに俺に抱き着く力を強める。




時雨はそんな璃壱にイラッとしているのに俺は気づき少し焦る。




このままじゃヤバイと俺の脳内に警告の文字が浮かび上がる。




「璃壱、離れろ!俺、着替えるから!」




必死に璃壱から逃れようともがくと「え〜」と不安の声をあけながら渋々といった感じで俺から離れる。




離れたのを確認してチラッと時雨の顔を見てみるとすでに怒っている様子はなくて、ホッとした。




時雨を怒らせるとそれより怖いものはない。地獄の門が見えてくるぐらいだ。




……俺の1番怖いものは時雨の怒ったときだからな。




俺は着替えを始めるべく、スワェットを脱ぎハンガーに掛けてある真っ白で汚れを知らないシャツに手を通す。




「……リビングでテレビでも見てきたら?」




自然に俺の部屋でくつろいでいる2人に問いかける。




2人はそんな俺の言葉が聞こえているのに無視をし、俺の部屋から出ていこうとはしない。




璃壱に至ってはくつろぐどころか俺のベットでゴロゴロしてるし。




時雨はというと立ち上がり、俺の前に立ちシャツのボタンをとめ始める。




…もう一度言おう、俺のシャツのボタンをとめ始める。




「あぁ〜アスの臭いだ〜ふふっ。」




と、スンスン鼻をならす璃壱。




いや璃壱それセクハラ。




しまいには布団の中に入る璃壱。




嬉しそうな顔をしながら毛布にくるまりゴロンゴロンと左右に転がる。




……………。




「…ふふふっ。」




………もういいよ。好きにしてくれ。




「………」




そして、時雨は俺のシャツのボタン無言でとめてるし。




無言で。