アカン……アカン……て。
翔平に似てないと言っても、義理の妹やとしても、めっちゃキレイな紬ちゃん。
まさか笑いかけられるとは思ってへんかったから、ほんまに、ほんまに不意打ちやった。
いつもいつも、悲しい顔して眉さげて。
そんな紬ちゃんしか見てこうへんかったから。
「アカン……」
にやける口元を、必死で隠す。
もっと笑わせたい、笑わせてあげたい。
俺が、俺が笑わせたい。
「……太、」
悶々とそんな想いが胸に込み上げてー……
「修太!!」
「わっ!!」
「ボーッとしすぎ。修太、きいてた?
お前もそう思うでしょ?」
和成が、少し伸びてる髪をクルクルといじりながら聞いてくる。
アカン……紬ちゃんのこと考えてて全く聞いてへんかったわ……
「すまん……聞いてへんかったわ」
それどころやないねん。
そんなこと言うてられんのや。
「だから、翔平の妹!紬ちゃん!!
めっちゃ可愛くない??」
「へ!?」
びっくりした。
心読まれたんかと思ったわ……
「紬ちゃんな、かわええと思うで!!」
とりあえず、素直に答えとく。
紬ちゃん、普通にかわええし、街中歩いとったら、スカウトとかされんのちゃう?
「だろ?
翔平はなんでそんなに冷たいのかなぁ~?」
和成は、スタスタと背筋まっすぐに歩く、翔平に覗き込むように言った。
そんな和成を見て、翔平は眉を潜めたが、無言のままや。
「冷たいどころか、いじめてるよね?
なんでそんなに嫌いなの?」
あれ、今日の和成はずいぶんグイグイ聞くんやね?
「…………」
「まぁいいや、
俺さ、紬ちゃん以上に可愛い子見たことないんだよね、狙っていい?
お兄ちゃんの許可必要?」
和成ィ……やめときや……
それでも無言を貫くのか、と思ったとき
「……ぞ」
「へ?」
「アイツに、お前はもったいないぞ、和成」
翔平は静かにそう言い放った。
そして、そのまま目の前の自室へのドアを開けた。
「へぇ……?」
和成は、今のでなにが起こったのか、わかってるみたいやけど、俺にはわからへん。
でも、とりあえず、さっきの胸に込み上げてくるような、気持ちが俺は解決してへん。
「ちょっくら便所いってくるわぁ」
俺は、掃除の手伝いもかねて彼女のもとへもう一度、会いに行くことにした。



