真白くんに半分あきれながら、千哉のことを考える。
「千哉に言いにくい、かぁ……」
確かに、千哉は見た目怖いけど……。
すぐ照れるし、結構親しみやすいと思うんだけど。
そんな姿を彼らは知ってるのだろうか?
多分知らないんだ。
そして、私という存在でさらに千哉への不信感……じゃないけど、千哉の謎めいた部分が強調された。
千哉を知ってもらうためにはっていう「方法」を考えたとき、私が邪魔になってる……よね?
「紬、じゃあ最終下校時刻になったら倉庫行く?」
真白くんにそう言われなくてもそうするつもりだった。
つもりだったんだけど……。
私が千哉の足枷になってるなら、私の素性をはっきりさせればいいんじゃないの?
今まで怖くてなにも言えなかった。
千哉にさえ言ってなかった。
義兄である翔平さんからの暴力。
義姉である愛莉ちゃんからの嫌がらせ。
そして、彼らの友だちである修太くんとの出来事。
聞いてほしいこと、なんだかんだでたくさんある。
私がなぜ倒れていたのか、なぜ倉庫に入り浸るのか。
それを知らずにまだなにも私に言ってこないAEGISのみんなは心が広すぎだと思う。
……敵対してる族の妹ってことだけ隠しそう。
他は、話してしまおう。
敵対してるってバレたらすぐに追い出される。
どっちにせよ追い出されるなら、あとの方がいい。
「真白くん、やっぱ今から倉庫行く」
そう言った私に対して、真白くんは一瞬驚いたようにキャンディーを舐めるのをやめた。
けど、またすぐなめだして。
「……わかった」
なにも言わず、私の荷物を手にとって廊下へ出た。