へっ...待って。
亮太センパイの唇が近づいてきている?!
こっ...これはどうしたらいいの?!
...んっ。
センパイのあたたかい唇が...
私の唇に当たった...。
つまりこれは、
“キス ”。
私...亮太センパイとキスを────。
目を見開く私の反応に亮太センパイが笑う。
「未宙...なんか変だよ。
...よくここでキスしたじゃん?
裏庭は、誰も来ないから凄い良い場所だよね」
センパイは、制服のズボンのポケットに左手をつっこむと、右手で私の頭をなでた。
センパイは手まであたたかい。
「未宙の髪の毛。
相変わらずいい香りだな。」
そう言って亮太センパイの手が、私の髪の毛に触れる。
そういえばシャンプーは、
未宙が使っていたシャンプーと同じものを使っているからかな...。
亮太センパイ...
本当に未宙が好きなんだな...。
「ん?
俺をそんなに見つめんなよ未宙...。
...照れる。」
...はっ。
つ、つい亮太センパイの目をじっと見てしまった。
というか、亮太センパイに見とれてしまった。
...やばい。
また心が痛む。
私...、亮太センパイのことを本当に好きになっちゃったんだ。
やだな。
まだ、亮太センパイが本当に優しいのか分からないはずなのに...。
ねえ、未宙。
...もしかして、未宙は今の私と亮太センパイがいる所を天国で、見てる?
私達、双子は男性の好みが一緒だね。
未宙、嫉妬しないでね。
亮太センパイは、ちゃんと“未宙 ”として愛してくれているから。
そう思いながら空を見つめる私の姿を、不思議そうな顔をする亮太センパイ。
亮太センパイの目を見開いた顔も...、可愛いんだなぁ。
「空ばっかり見つめてる未宙の姿かわいな...」
唐突にそう言ってきたセンパイに顔が熱くなる。
火照ってきた顔を、冷たい秋風が冷ましてくれた。
「...外出てたら風邪ひいちゃうね。」
そう言って亮太センパイが、また私の手を引っ張ろうとする。
手を引かれる感触。
なんだか...このまま校舎に戻るなんて嫌だな...。
もっともっと亮太センパイに触れたい。
...触れたいな。
そう思った瞬間、
秋風が強くなった。
これはただの偶然かもしれないけれど、
私には未宙が怒っているように思えた。
未宙が、亮太センパイに本気で惹かれているのに怒っているのかな。
亮太センパイの隣にいてまだ、1日も経っていないのに...。
未宙になりきったのは、センパイと知り合った昨日の出来事から始まったばかりなのに。
...なんでこんなにも────。


