そして、待ちに待った放課後。
私は、自ら亮太センパイを探すために3年生教室まで向かうことにした。
教室まで行く途中の廊下で亮太センパイの背中を見つけた。
大きな背中...。
...今すぐ抱きつきたいなぁ。
どうしよう。
自分が...止められない。
思わず勝手にカラダが動いて────
センパイを後ろから抱きしめてしまった。
...ごめん。未宙。
こんな由宇を許して────...。
亮太センパイは、私の想像していた以上にあたたかい。
冷え込んでいたカラダがあたたかくなっていく。
ココロまで、あたたかくなる。
...亮太センパイ...いい香りがする。
「未宙...。
後ろから抱きつくのは反則だぞ。」
「え...えへっ」
「未宙の手...まだ冷たいな。
大丈夫か?」
「だっ...大丈夫だよ。」
「寒いんだろ?
もうすぐ11月になるもんな。
手もあたためよっか?」
そう耳元でささやかれ、体温が上がっていく。
徐々に手の方にも顔の熱が伝わってきた。
「あれ?俺があたためる前に、もうあつくなってる。」
そう言って、私の手を優しく握る亮太センパイの手。
...大きい。
男性の手っていいなぁ...。
「てか俺。
未宙が俺を後ろから抱きしめているせいで未宙の顔、見れてないんだけど。」
「あっ...ごめんなさい。」
「許さないよ?
...なんちゃって。」
センパイはそう言いながら、私の手を優しく振りほどく。
そして、私の顔を見て微笑んだ。
「今度は、前から抱きついて下さいね。
...み・そ・らさんっ。」
いたずらっぽく、笑いながらセンパイはそう言うと私の手を引っ張った。
「えっ?!りょーちゃん...どこ行くの?」
「...どこって?
いつもの所じゃん。」
...いつもの所...。
いつもの所って私に言われても分からない...。
でも、私は“ 未宙”だから...。
ココロが痛む。
なんだか...ズキズキする。
私は亮太センパイに、右手を引かれながらずっと左手で自分の胸の当たりをおさえた。
さっきから...本当にズキズキ胸が痛む...。
私の心情を知らないセンパイは、明るく微笑む。
「未宙、ついたよ!!」
そこは、裏庭だった。
「おおっ!!すごいねー。」
どう反応したら良いのか分からず、意味の分からないようなことを言ってしまった...。
この裏庭が...、
未宙と亮太センパイにとっての“いつもの所 ”?
私の変な反応に、
センパイが声に出して笑った。
「未宙って、変なの...」
そして、低いトーンで亮太センパイが言ったと思いきや...センパイの唇が近づいてくる。


