センパイ、私は由宇です…。




放課後。



私は、“ある場所 ”へ向かった。



亮太センパイは、
きっとあの場所に居るだろう...。




...これで、
亮太センパイの隣に居れるのは最後になるのかな...。




...だめ。


まだ、泣いちゃダメだ。



亮太センパイは、もともと私の彼氏じゃないんだから。




やっぱり...亮太センパイがいた。



“あの場所 ”とは...
窓からオレンジ色の夕日が差す廊下。




ここで、亮太センパイと知り合ったんだ...。


────懐かしい。





私の気配に気づいたのか、亮太センパイが振り向く。





「お弁当、ありがとう。」



亮太センパイは、
微笑んで私にお弁当を渡した。



亮太センパイは、もう私に対して他人のような態度をとっている。




...私を、未宙と呼んでた時とは違う亮太センパイの態度。



そして、とても寂しそうな“ 目”。



私が、亮太センパイとのデート中に見た寂しげな表情と同じだ...。




私は、渡されたお弁当を受け取る。



...あれ?


お弁当が重い...。





「ごめん...。食べてないんだ。
俺のために作ってくれた弁当だったのに...ごめん。」




亮太センパイの“ごめん ”という言葉が、わたしのココロに重く響いた。





「そんなに...謝らないで下さい。」



この一言を言うので精一杯だった。




「...未宙と顔がそっくりな双子の妹がいること知ってたんだ」




...え?



センパイは、そのまま話を続けた。





「未宙が生きている時に、
君の話はよく聞いてたんだ。」




亮太センパイの“君 ”という呼び方にココロが痛む。



こんなの...覚悟していたのに。



なんで、こんなにもココロが痛むんだろう。




センパイは、私の気持ちに気付かずに、話を続けた。





「...未宙が亡くなった時は、自分を責めた。
あの日、ちゃんと俺が未宙を家まで送っていたら...」



弱々しい声を出すセンパイ。



...センパイ、そんな顔しないで...。




「...俺は、未宙を愛していた。だから、未宙の死を受け入れられない自分がいて。
辛い現実から逃げるように、この夕日を見て心を安らげていたんだ...」





私は、夕日を見つめた。


ただ、美しくオレンジ色に輝く夕日は人の心を癒してくれる。




私の...今の辛い心の痛みも癒してくれている。


いっとき、沈黙が続いた。



亮太センパイは、
数分間を置いてからまた話し始めた。





「そんな時...君の姿を見て、未宙は生きているんだと...似ている君を見てそう思った。
でも、心のどこかでは気づいていた。
未宙じゃない...って。」





...そっか、
気づいていたのに...亮太センパイは、未宙を亡くした寂しい気持ちに勝てなかったんだね。