センパイ、私は由宇です…。





────でも、不思議。



昨日あんなに、辛い気持ちになったのに亮太センパイに会うと心が軽くなる。




朝早く家まで迎えに来てくれる亮太センパイを見ると、自然と笑顔になる。





「ねえ...未宙。
ここにキスして?」



センパイは、
“ここ ”と言いながら自分の唇を指す。




「...え?
朝からですか?!」


思わず動揺して敬語になる。



「...だめ?」



センパイは、私より身長が高いのに
わざと中腰になって上目遣いをした。



亮太センパイの上目遣い...かわいい。



まるで小さい子どもが、大人に欲しいものをおねだりしているような表情。




「...りょーちゃんのばかっ」



私は、
中腰になった亮太センパイにキスをした。


11月上旬。


冷え込んでいるカラダが、あたたかくなる。



「あれ?未宙...まだ唇冷たいよ?」



「...大丈夫だよ。」



「駄目駄目。
風邪ひくから...あっ、そこの自販機で何か温かい飲み物買うね?」



亮太センパイの気づかいに、朝からキュンとする。



「あっ、でも...私が払うよ?」



「...駄目です。
ちゃんと...彼氏に甘えて下さい」




そう言って、恥ずかしそうに顔を隠すセンパイの顔を覗き込む。



顔が赤くなっていくセンパイの姿。



私が笑うと、センパイも笑う。



...やっぱり“恋 ”って楽しい。


辛い中にも“ 楽しさ”がある。


たとえ、自分の名前を呼ばれなくても...
自分としてセンパイが見てくれなくても、こんなにも楽しい気持ちになる。




「りょーちゃん...
本当にはちみつレモンありがとう。」




「なに...。その未宙のはちみつレモンの持ち方すごく可愛い...。」




「あー、またそんなことばかり言って!!」



そう言って左手にはちみつレモンを持ち替えると、センパイがいる右側の方へ右手を出した。




笑って左手をポケットから出すセンパイ。




この“幸せ ”は、いつまで続くか分からない。


────だから、
センパイの隣にいれる“今 ”を大切に過ごそう。