亮太センパイは、微笑むと私の頭を撫でた。
「未宙が寝坊だなんて、珍しいな。」
「えへへ...。」
「あんなに、妹に俺の姿見られたくないからとか言って早起きしてたのにな」
そう言うと亮太センパイは、また笑った。
────妹に俺の姿見られたくないからとか言って早起きしてたのにな。
...って。
頭の中でこのセリフが繰り返し再生されていく。
妹といったら、双子の妹である私しかいない...。
何でそこまでして、未宙は私に“ 亮太センパイ”の姿を見せたくなかったのかな。
もしかして、私が亮太センパイに惚れると思ったからかな。
今、
私は亮太センパイに恋しちゃってるけれど...。
「なに。未宙考え事してるの?
しかも...パジャマのままじゃん。」
亮太センパイに“パジャマのままじゃん ”と言われてハッとする。
やばい、恥ずかしい姿見せてしまった...。
「ごっ、ごめんね!!
すぐ着替えて身支度もしてくるね!」
「いいよ...未宙のパジャマ姿、初めて見たし...」
顔を赤らめるセンパイ。
わぁ...。
センパイの照れたような表情、かわいい。
「未宙のパジャマ姿、かわいいよ。」
でも、相変わらず呼び方は“未宙 ”。
仕方ないよね。
センパイは私のことを、未宙って思っているんだから。
「あっ!
りょーちゃん私、準備してくる!!」
そう言って急いで準備をした。
お母さんの問いかけにも曖昧に答えながら朝ごはんを食べた。
急いで身支度をし終わると、ドアを開けてセンパイの目の前に立った。
亮太センパイがまた笑う。
「未宙。
髪の毛ボサボサ(笑)」
そう指摘されて、私は慌ててカバンからヘアブラシを取り出した。
「りょーちゃん、
きちんと髪の毛、結びなおすから待ってて!!」
「未宙ってドジなところもあったんだな。」
そう言って微笑むセンパイに、心の中で“ 未宙はドジじゃないのに...未宙ごめん”と謝った。
慌ただしい朝になったけれど、
センパイとのドキドキな学校生活が今日もスタートした。
学校に着き、教室へニヤけながら向かう時に友達であるルカが後から抱きついてきた。
「ゆうーーー!」
「ん?!あっ、ルカ?!」
「なんか...朝からニヤけてる〜?」
「に...ニヤけてないけど...」
「誤魔化しても無駄無駄!!
私、見たんだからね〜!」
「見たって?」
「亮太センパイと〜、
由宇が一緒に登校しているところっ!」
「へっ?!...なんか恥ずかしいなぁ」
「もー!リア充っていいな〜!!」
“リア充 ”かぁ...。
私が、本当に亮太センパイの彼女だったらなぁ。
亮太センパイが“私の名前 ”を呼ぶ日は来るのだろうか...。


