センパイ、私は由宇です…。




次の日の朝。



お母さんが動揺しながら、私の部屋をノックする。




寝ていた私は、自分が寝過ごしたのかと思い慌てて時計を見る。




────なんだまだ6:30じゃん。




再び寝ようとした私に、お母さんが驚いたような...焦ったような声で言ってきた。





「...亮太くんが...来てるのよ!!」




「えっ...ええ?!」



思わず大きい声が出る。




「亮太くんって...未宙の彼氏くんよね...?」



「え?!
...お母さん知ってたの?!」




「知ってたも何も、いつも未宙を迎えに亮太くん...うちに朝早く来てたのよ?」




「...え?!うそっ...」




「嘘じゃないわよ。
由宇...気付かなかったの?
まあ、アンタはお寝坊さんだったし...それに...」




それに...と言った後、お母さんが言葉をつまらせた。



お母さんは、私の顔を申し訳なさそうに見ると少し早口気味に話し始めた。




「未宙から、言われてたの。
彼氏の事は由宇には内緒にしていてほしいってね。」




「...なんで?」





「まあ、その話は後でゆっくりするから...。
それより亮太くんの事どうしたら良いのかしら」


お母さんは、焦りながらそう言った。



未宙が亡くなって時が経つというのに、亮太センパイが“未宙 ”を迎えに家まで来ている。




「ねえ、由宇。どうしよう...。
亮太くん、未宙が亡くなったこと知ってるはずなのよ...?」




「...うん」




「未宙が亡くなったことを、亮太くんは知っているはずなのよ?!」





お母さんは、混乱しているのか
さっきから同じことばかり言っている。





「お母さん、大丈夫。
とにかく亮太センパイを待たせたままじゃ悪いから私が行くね!!」




そう言って階段を急いで降りた。


玄関のドアを開けると...
本当に亮太センパイがドアよりも少し離れた所に立っていた。




「未宙...寝坊したの?」




「りょ、りょーちゃん...」