ドキドキしながら向かったのは、待ち合わせの玄関。

ムードない場所なのにドキドキする。

私が北斗を見つける前に北斗が声をかけてきた。

「行こっか」

私は首を縦に振る。

無言…。
先に口をわったのは北斗。

「今日、何で早く学校行ったの?」

「早起きしちゃって…」

「それならよかった。避けられたかと思ったから」

避けたりしないよ。
だけど…私といていいの?
好きな人に勘違いされちゃうよ?
もしかして他校の人?

私達はどこに行こうとしてるのか…。

通学路の桜が咲いていた場所。
そこは土手になっていて、目の前には川が流れてた。

「ここで話ししない?」

「うん…」
ドキドキする…。

川の流れは動きがあって眺めてるだけでも飽きない。

北斗は何も話さない。

だから私は「ノートありがとう。助かりました。」

そう言ってノートを差し出した。
無言で受け取る北斗…。

「どうしたの?機嫌悪くしちゃった?」

「そうじゃなくて…」

こういうの苦手…重たい空気…。

「あかねさ…俺の…」
何?続き…

「俺、あかねの事好きだよ。」

今何て言ったの?

「付き合ってください」

……びっくりしすぎて言葉が出てこなかった。
でも、私この恋逃したくないから…
勇気だすね。一回しか言わないよ…。

「私ね、きっと北斗が初めて声かけてくれた時からずっと好きだったよ…。からかわれてると思ったのも本心だけど…。ねぇ…私地味だよ。私でいいの?」

「いいの」
そう言って北斗はくしゃって笑った。
その顔好きだよ。
恋って…彼氏ってこんなにも愛しいものなんだね…。

北斗は「めっちゃ緊張したぁ」って叫んでた。
さゆりさんとはちゃんと話し合って別れたから心配しなくていいって言っていた。

……信じていいよね?……
この恋は絶対失いたくない……。

初めて北斗と手をつないだ。
あったかい。
いや…暑い…。
夏だもんね。仕方ない。
でも離したくない。

私がコンビニでバイトしてる話し。
プラネタリウムを見るのが好きな事。
自分の事色々聞かれて気付いた…。
今まで自分の話しした事なかったね。

北斗はバイトしている事に驚いていた。
いっつも家に居るイメージしかなかったんだって…。

確かに学校終わったらすぐ帰ってるし、そう思うのが普通だよね。

北斗の家は両親共働きで家に一人でいる事が多いと言っていた。
なななんと家は歯医者さんなんだって‼

「私、歯科衛生士になりたいの‼」
咄嗟に言ってしまった…。

北斗は「そうなんだ…俺は歯医者は無理だから…今のところニートかな‼」

何それ?面白い。

「俺、勉強嫌いだし」

「私も‼大嫌い‼」

二人で笑ったね。
楽しかった。
時間があっという間に過ぎたね。

北斗と私は電車の方向が同じで先に降りちゃうのは北斗。

って事は電車の中から一緒だったんだ。
気付かなかった。

北斗が見えなくなるまで手を振った。

こうなるとあんなにだるかった朝が待ち遠しい。

早く北斗に会いたい…。

ケータイを持ってない私は連絡手段は家の電話のみ。
しかもコード付き…。
終わってる。
北斗のケータイ番号教えてもらったけど、リビングで話すとか無理。
お父さんとお母さんに会話つつ抜け…。

だから我慢‼
朝までの辛抱。

でもね…もう少しで夏休み。
学校休み=会えない
家の電話は無理…。
北斗との連絡手段がない‼
キツイよ…。

私は決めた‼
バイト代でケータイを持とう‼

親に交渉。
第一の大きな壁…。

「あのさ…ケータイ欲しいの」

「家に電話あるでしょ‼」と母。

「バイト代でどうにかするから…」

「お金の無駄使いじゃない?」

母は昔ながらの考え。
父は仕事の関係で許されている。

説得には時間がかかりそう…。

父よ…助けてくれ…。
と言わんばかりに見つめた。

「自分で働いたお金なんだからいいだろ」

神様だ…。

母はニュースを見てケータイを持たせるのは…と渋る。

父は「なるほどな」

おいおい…やっぱり時間が必要だ。

だけど父…。

「トラブルが起きないように報告すればいい」

神様…。

母…。
「そう?じゃ…好きにしなさい」

私…。
「ありがとう」


今さらだけど、私は一人っ子。
母は婦人科系が弱く何度か流産し、やっと授かったのが私…。
生まれた日、茜色に染まる空がキレイな日だったから名前があかねになった。

そんな母は少し過保護。

相手が私だし、わかる気する。

とりあえずケータイの件は突破‼
週末にでもとショップに行く事になった。

いい事って重なるもんだ。
逆に悪い事も…。


次の日学校でりこには報告した。
北斗との事…。
りこは「やっぱり?」と予想済み。
一緒にデート行けるねって喜んでくれた。

この幸せがいつまでも続きますように…
そう願わずにはいられなかった。