クリスマス…

私達はやっと結婚指輪を買いに行った。

私は仕事の日は指輪ができない。

だからネックレス。

大翔は初めてのお揃いで買ったペアリングを離さずつけてくれていた。

お互いにまた買いあって、二人が気に入ってる指輪が売っているショップに行った。

混んでる…クリスマスだから。

ガラスケースを見てたら店員さんが来た。

欲しい指輪の名前を言うと持ってきてくれた。

指のサイズを計ってはめてみた。


「いいじゃん」

「かっこいいね」

店員さんに会計を済ませた。

街は賑やかだ。イルミネーションもキレイ。

いつもはない景色…。


だけど…働き始めて8ヶ月。

気付けば3ヶ月…生理きていない。

私は環境が変わったせいだと思ってた。

専門学校に入学してすぐこんな事あって、婦人科を受診した事があった。

だから多分そのせい。

だけど気になる…。

その内くるだろうと思って3ヶ月たってしまった。

仕事も休めないし、どうしたらいいか悩んでいた。

「どうした?」

「えっ?何で?」

「ぼぅっとしてるから」

そう…ぼぅっとしてる。

違うはず…何年かは働くって両親と約束した。

一人の問題ではないし、大翔には話そうと決めた。


「ねぇ…どこかで温かいものでも飲まない?」

「いいけど…寒いの?」

「話したい事あって…」

「何?」

「そこで話す…」

「気になる…何?」

今話すの…?

大翔はじっと私を見てる…不安そうな顔で…。

私も不安だよ…違うかもしれないし、もしそうだったら喜んでくれる?


私は深呼吸した…フゥー…

「あのね…もしかしたら…違うかもしれないけど…」

「だから何?」

コワイよ…その顔…眉間のシワが…

「私…赤ちゃん出来たかも…」

大翔は何も言わない。

やっぱり今は無理?

まだお父さんになりたくない?

「検査した方が良くない?」

「もし赤ちゃん出来てたら?」

「あかねの両親に謝って、あかねには頑張って俺との赤ちゃん生んでほしい…」

「………いいの?」

「俺はそうなってもいいと思ってしてるから」

大翔は迷わない。

いつもはっきり言ってくれる。

その性格も好き…。

ドラッグストアーで検査薬を買った。

本当はご飯食べて帰る予定だったけど、予定変更で家に帰ってきた。

二人で説明書に目を通す。

私はトイレに向かった…。

ドアを閉めてからドキドキして、なかなか出来ずにいた。

「あかね、どう?」

「まだしてないから待って…」


私はドキドキしながら検査をして、結果は見ないでトイレから出た。

結果を見るのがコワイ。

嬉しい事なのに、不安になるのは両親への後ろめたさ。

「結果見よう」

「うん…」

せーのでひっくり返すと線が二本。

「陽性」

大翔はとても喜んでた。

お腹に向かって「パパだよ」って。

私は母に連絡をする。

なぜか呼び出し音を聞いてるとますます緊張してきた。

「はい、佐藤です」

「お母さん?あかね…」

「あかね‼どうしたの?」

「あのね…」

「うん」

「私…妊娠したかも」

「そう…大事にしなきゃね」

「うん…こんなに早く仕事…ごめんね…」

「命以上に大切な事ないよ…あかねと大翔くんを選んでくれた赤ちゃん大事にしなさい」

お母さんは苦労したからかわかってくれた。

私もばぁちゃんになるのねって楽しそう…。

お父さんからも「おめでとう」とメールが来た。

赤ちゃんはこうやってみんなに祝福されて生まれてくるんだね…。

幸せだね。

大翔の両親にも連絡したら「おめでとう」と言ってくれた

「一番のクリスマスプレゼントは赤ちゃんだな」って笑う大翔は優しい顔をしていた。


「そうだね」って私も自然に笑顔になる。


夜ご飯は結局普通のご飯…しいて言えばケーキがあるだけ…。

だけどいいクリスマスになったよね。大翔。


この日の夜は大翔と抱きあって寝た。


朝起きた私に「今日、病院…俺も行くわ」

「仕事は?」

「病院終わったら行く」

私にとってはありがたい。

一人で行くの不安だったから…。

職場には体調不良と伝えた。


大翔と家を出て病院へ向かう。

雪が降っていて今日は寒い。

「寒くない?」とか「気分悪くない?」とか色々聞いてくれるけど緊張で全然大丈夫。

病院について保険証を提示し、問診を記入した。

お腹の大きな人がいっぱいいる。

「混んでるね」

「そうだな…」

大翔は緊張してるのか口数が急に少なくなった。

しばらくして「神木 あかねさん」

「はい」

「お小水取ってきてください」

「はい」

「トイレに紙コップありますから名前書いてかごにいれてください」

「はい」

私はトイレに行って、診察の順番を待っていた。

大翔はおとなしい。

かえって緊張します…大翔くん。


「神木 あかねさん、中待ち合いにどうぞ」

「行ってくるね」

頷くだけ…。

中待ち合いには色んなポスターが貼ってあってそれを見てる内にすぐに呼ばれて診察室へ。

お腹の状態を見る…。

「ここが赤ちゃんのお部屋だよ…今4ヶ月だよ」

そんなに経っていたの?

「気付かなかったの?」

「はい…環境が変わったせいだと…」

「そうだったの…赤ちゃん元気だよ。おめでとう」

と言われもらった写真。

小さくて全然わからないけど…愛しい。

「妊娠証明書ね…次ぎ来るときは役所から母子手帳もらってきてね」

「はい…ありがとうございました」

そう言って診察室を後にした。


あれ?さっきのところに大翔がいない。

と思ったら飲物を持って歩いてきた。

「どうだった?」

「見て…赤ちゃん。4ヶ月だって」

「かわいいなぁ…どこがどうかわかんないけど…」

「だよね」

「でもさ…あかね気付くの遅くない?」

確かに…つわりというものもないし、気付かなかった。

気になり出したのも最近。

「先生にもそんな感じの事聞かれた…」

「だろうね」

次回の診察の予約をして、会計を済ませて病院を出た。

このまま母子手帳をもらいに行こうと言う話しになって役所へ。

このお堅い空気苦手。

保健師さんに妊娠中の気を付けた方がいい話や、栄養の話しなどを聞いて母子手帳をもらった。


大翔は「楽しみだな」本日何回目?

赤ちゃんが生まれる前にキングサイズのベッドを買うと言い出した大翔。

川の字で寝たいらしい。

私は職場に妊娠の事を話すと、仕事中に何かあったら困るからと来月いっぱいで退職する事になった。

「パパ、お仕事頑張って‼」

「余裕」

大翔は私が働かなくていいくらい収入がある。

だからその不安はない。

ただ、残業で夜の12時に帰ってきたりするから一人の時間が少し不安だったりする。


仕事は後1か月…あっという間。


何しよう…5ヶ月間。

特に体調悪いという事もなく…。

「暇だなぁ」と開くマタニティの雑誌。

用意するものいっぱいだ…。

お母さんに相談しながら、あれこれ買うものを決めた。

大翔は何でも買おうとするから相談するのは遠慮した。


歩くといいとか雑巾がけがいいとか…毎日はちょっと…。

6か月目でやっとお腹が少しでてきた。

ぽっこりお腹が何かかわいい。

私が妊娠してわかった事は大翔が心配症だった事。


仕事から帰ってきたら必ず「体、大丈夫?」から会話スタート。

「体冷やすな」とか本当にうるさいくらい言われる。

その一言も愛を感じる…素敵なパパとママになろうね…。