気付けは青々していた草が黄色になってきてまさに秋。

寂しげに見える気色。

ちょうどいい気温。

少しだけ長く感じる夜。

隣にいる北斗。

季節以外に変わったことはみちるちゃんと仲良くなった事…。

北斗の家のバーベキューに呼ばれて行った時から。

みちるちゃんは何となく気が合って話がはずんだのがきっかけ。

初めて見た北斗のお兄さんは、一見チャライお兄さん。
話すとそうでもない?
いや、話を聞いてると自由人。

顔はお父さんとお母さん÷2…。

お父さんは堅そうに見えて面白い話をたくさんしてくれた…けど思い立ったらすぐ行動する性格は北斗のお兄さんが引き継いだのか…と思いながら話を聞いていた。

お父さんも自由人…。

お母さんがしっかりしているからいい関係。

素敵な家族。

みちるちゃんはそんな自由人の彼氏に不安を感じて同棲したかったみたい…。

いつも気まぐれで振り回されてると笑っていた。

私は…無理。

バーベキューの片付けを手伝っているとお母さんに呼ばれてキッチンヘ行った。

「北斗、不器用だけどよろしくね」

不器用かな?

「はい」

お母さんは続けた。

「今はあんなだけど、中学の頃は手がつけられなかった」
と…

嘘でしょ…?

「いわゆる反抗期。うちはけんと(兄)に手がかかっていたから、北斗は寂しかったのかな…あの子自分の事言わないから…」

そうなんだ…そんな風に見えない。

真っ直ぐ育った子にしか感じなかった。

「北斗はあかねちゃんに会って、よく笑うようになったのよ…ありがとう…」


逆なのに…。

私が助けられてるのに…。

「私が変われたのは北斗のお陰なんです。だからお礼を言わなきゃいけないのは私の方なんです」

お母さんは「いいコンビね」と笑った。

その顔は本当に北斗と似ている。

お母さんに見とれてしまう私にお父さんは「ホレちゃダメだよ」と冗談で言ってきてみんな爆笑した。

「俺のだからぁ」ってお母さんを抱きしめてた。

北斗は少しあきれてたけど、笑ってた。

片付けが終わって北斗の部屋に言った。

うちの親バカだなから始まった会話。

「飲み物とってくる」と部屋を出た北斗。

テーブルにあるCD。
この曲私も好き。手を伸ばして開けてしまった。
開けなきゃよかったのに…。

ケースを開けるとカードが落ちてきた。
そこには…


大好きな北斗へ

happy birthday

ずっと一緒にいようね♥

みくより


二人で撮ったプリクラ…。
キスしたり…ほっぺたくっつけたり…。

こういうのは見たくないよね。
だけど北斗にだって過去はある…。
それは私だって一緒だ。

一ガチャッ一

「あかね…」

「ごめんね‼勝手に見ちゃった…」

「いや…捨てるの忘れてた。ごめん。」

待って‼
でも先月誕生日だよね?
いつもらったの?

この曲新しいよね?

「北斗…これ…最近のだよね?」

「………」

何とか言ってよ…。

帰ろうとした時、「元カノに会った…誕生日の日」

私をほっといていたあの時期じゃん。

「プリクラ撮ったの?キスしてほっぺたくっつけて…」

「………」

「別れてって言われた方がまだマシだよ…惨めだね私」

そう言って北斗の家を出た。

浮気?いや、私が浮気相手?
私達の過ごした時間はメッセージカード1枚に嘘ですと書かれているようにすら思えた。

不思議と泣けなかった。
多分…ちゃんと理解できてない。

さっきまで一緒に笑ってたんだもん。

こんな事予想できない。

何度もケータイが鳴っている。

″ 北斗 ″

私は電話にでなかった…。

最低だ…。遊びにまた私は使われたの?

一人が平気だった私はもういないよ…。
一人が平気だった私を返してよ…。

こんな風に終わるなら恋なんてしなきゃよかった。

私はどこまでも運がない。

「元カノ」に負けた。

それが答え。


私は次の日のバイト終わりに髪を切った。
春に切ったままだったし、スッキリしたかった。

ショートボブに前髪も思い切って眉毛の上まで切った。

「幼くなりましたね」

確かに…でもいい‼

失恋したら髪を切る…お決まり。

私だけ…?

りこには北斗と別れた事話した。
理由は言ってない。

北斗からは何度もメッセージが届いていたけどスルー。
既読もつけなかった。

「言い訳」にしか聞こえないから。

こうなると学校に行きたくないものだね。

顔も合わせたくない…。

朝は電車を1本遅くした。
もちろん会わないはずだった…のに…なぜいるの?

「あかね‼ちゃんと話そう…」

「何を?」

「話し聞いて?」

「無理…別れよ…私達。もういいから…みくちゃん、大事にして…」

北斗は何も言わなかった。

私ね、どこかですっきりしたの。
幸せだったり、時々不安になったりするのも恋って楽しいなって…。

だけど、何となくわかってた。

時々、北斗のつけていない香水の香りに…。

気づかないフリしてた。

その時から少しずつ覚悟してたのかも…私。

だから気持ちはほぼふっ切れてた。

好きだったよ…大好きだったよ。
すごく大切で、私を変えてくれてありがとう…。

いつか…友達に戻れるといいね。

時は戻らない。

だから同じ失敗をしないように生きていく。

私はもう恋なんてこりごりだ。

やっぱり私には一人が性に合っている気がした。