【綾乃side】
「綾、乃…」
少しかすれてはいるけど、優しく甘い声であたしの名前を呼ぶヒロくん。
その声はあたしが聞きたかった二週間ぶりの愛しい声そのもので。
ヒロくんはあれから二週間も目覚めなくて…
あと一週間経っても目覚めなかったら植物状態と判定されて、悲しい決断をする時が迫っていた。
だけど、戻って来てくれて本当によかった。
あれから、あたしは一週間ここの病院に入院したけど異常はなくて、退院できた。
「ヒロくんっ…ぐすっ…ありがとっ…戻ってきてくれてっ…」
ヒロくんの手をギュッと握りしめる。
もう今度は離さない。
あたしのヒーローはどんなことがあってヒロくんだけだって分かったから。
「当たり前、だろ…?
ドジで抜けてる、お前を残して、あの世になんか、心配で行けねぇよ…」