「ねぇ、なんで燃えてるの?」
「お母様!お父様!」
ガレスとシャルロが叫びに近い声を上げて問いかけるが、両親は青ざめた顔で前を見ているだけだった。一家は走り地下通路を目指した。煙が薄くなり城の一階に着いた時父親。つまり国王が振り返った。
「ガレス、シャルロ。怖かったか」
「うん」
ガレスが今にも泣きそうな顔で返事をする。シャルロは母親に抱きつき泣きじゃくっている。
「一旦アズ城に避難しよう。明るくなってから原因を探ろう。」
「えぇ。ほらシャルロ、泣かないで。大丈夫よ」
母親はシャルロの手を強く握った。
一家は再び地下通路を目指す。
地下通路まであともう少しだった。曲がり角に差し掛かった時。
ドスッ
重い鞄が落ちるような鈍い音がした。
その直後父親と並んで走っていた母親が悲鳴を上げるも、鈍い音に遮られた。
シャルロの手から母親の手が離れ、母親は倒れた。両親が倒れて視界の先にいたのはナイフを片手に持った青髪の兵士だった。
ガレスとシャルロの頭の中で両親との記憶が流れた。そのままスクリーンが遠ざかっていくように二人の頭の中は真っ白になった。
立ちすくむ二人に兵士はナイフを持ったまま近づいていく。
ガレスとシャルロは兵士が何をするのかわからなかった。
「ガレス!シャルロ!」
キャサリンの声と後ろに引っ張られる感覚で二人は意識を取り戻した。
キャサリンは二人の手を引き来た道を引き返す。二人はキャサリンに追いつくよう走る。
何も考えていないはずなのに三人は泣いていた。そして必死だった。
後ろから兵士が追ってくる様子はなかったが、厨房に入り勝手口から裏庭に出た。
嵐はおさまっておらず、風と雨のせいで薔薇の花壇はボロボロだった。
「ガレスー!」
「シャルロー!」
後ろからミリーとクロエの声がする。聞き慣れた懐かしい声が響く。しかしもうその声に何も思うことは無かった。振り返ることなくキャサリンの後ろを追いかけていく。
背後で城が崩れる音がした。
