依頼料を前金で受け取り、ジェイソンは確かに荷物を預かって車に乗る。

BMW735iのエンジンに火を入れる。

今日も愛車は快調だ。

軽快なエンジン音と共に目を覚ます。

「それじゃあ頼むぜ。これをニューヨークからワシントンまで約375キロ、5時間程度の旅だ」

「造作もないな」

運転席から依頼人の男の言葉を受け、ジェイソンはアクセルを踏んだ。

静かに、ゆっくりと走り出すBMW。

過去にはマフィアのボスを刑務所から西海岸まで警護しながら走った事もあるし、ニトログリセリンを大量に積んでロサンゼルスのど真ん中を走った事もある。

それらの仕事に比べれば、今回の積み荷はジュラルミンケース1つだけ。

楽な仕事に違いない。

…その筈だった。