大して重くはない。

大きなジュラルミンケースの割に、中身は重量物ではない印象を受ける。

ジュラルミンケースを見れば容易に連想される、札束や貴金属の類ではなさそうだ。

しかし。

「丁重に運んでくれよ」

依頼人の男は言う。

「勿論だ」

ジェイソンは答えた。

積み荷の価値、大きさに関わらず、預かった荷物は迅速且つ確実に運ぶ。

それがジェイソン・マーティンのモットーだ。

その仕事ぶりが評価を得て、こうして口コミで噂が広がり、ジェイソンは仕事を受けるようになった。

時には要人警護、時には運搬輸送。

愛車のパールホワイトのBMW735iを駆り、どんな場所にでも送り届ける。

荷の中身については一切問わず。

時には非合法なものを輸送する事にもなる。

それでも依頼の成功率は、過去100パーセントを誇っていた。

同レベルの仕事をできる者は、ジェイソンの他に日本にもう1人いるだけだ。