sideRio





「ねぇ、叶わない恋するより近くの人を好きになって落とす方が簡単じゃない?美沙近くにいる良い人知ってるよ〜!」





お昼休み、窓際の後ろの席を陣取ってお弁当を食べていると美沙が突然話を切り出した

最初は何の話か分からなかったが
叶わない恋、という単語で次第に分かってきた
あぁ、朝していた恋話か

そんなことすっかり忘れていつも通りお母さんの作ってくれたおにぎりを齧る、散々悩んでいたのに何か他のことに集中してしまうとすぐに忘れてしまう私の悪い癖

そんな私とは逆に責任感の強い美沙はきっと授業中も朝の恋話を考えてくれていたんだろう

せっかく親友が授業の時間を潰してまで考えてくれたことだし、話を乗らないわけにはいかない、それに私もレトくんのことを思い出してまたモヤモヤし始めてくる

ここはいっそのこと違う人を好きになってしまった方が楽な気がして、逃げるわけじゃない、ただその良い人っていうのが少しだけ気になるだけ





「で、良い人って?」

「ほら、あの人!身長高い赤い髪の人!清川先輩!かっこよくない?!身長180センチあるんだって〜!しかもモデル体型で顔をまぁまぁ良いし運動神経も良い!好きになっちゃいそうじゃない?」

「ん〜?」







窓から身を乗り出している美沙に続いてグラウンドを見ると1学年上のジャージを着た先輩達が楽しそうにサッカーをしていた

多分あの叫んで笑って楽しそうにサッカーしている声の大きい人が清川先輩だろう

前々から女子の間では噂になっているし聞く話によるとファンクラブまであるそうだ、気取ってない感じが逆に良いらしい

確かに身長は高いしカッコイイし髪の毛は遊んでてお洒落だし運動神経も良さそうだしあの笑顔と周りの笑い声から悪い人ではないだろうしむしろ良い人なんだとは思うんだけど





「なんか、違う」






憧れる気持ちは分からなくもないけど好きかどうかと聞かれたら多分好きにならないしタイプが違いすぎる、あれは見ているだけで良いや、一緒に居てもなんか振り回されるだけな気がして私とは一緒にいちゃいけないタイプだと思うし







「えー、まじで?美沙結構キヨ先輩好きだよ」

「それは美沙が面食いなだけでしょ?」

「それを言うなら理央もじゃん!てか美沙もっとイケメンが好き〜!大学生と付き合いたい〜!あと頭良い人〜!」







全く美沙は、そうため息混じりに言っていると1人の先輩がサッカーをやっている集団に合流した

少し茶髪で普通よりか小柄で可愛らしく遠目からでも優しさを感じるような暖かい雰囲気の人

あの人……








「ねぇ、美沙」

「私、好きな人出来たかも」









一瞬にして心を奪われたあの人
好き、という気持ちが抑えれなくなってドクンドクン、と心臓が大きな音で脈を打ち鼓動もどんどん早くなる、身体中に熱が集まってくる

あの人が私の運命の人だと思う
多分、これは、きっと、間違いじゃない
真っ直ぐあの人を見つめると何だか目が合った気がした