side Rio




暫くしていつも優しくて可愛い美沙が私に向かって呆れた顔をしため息を吐いた

ため息ばかり吐いてどうしたの?と聞いた本人がため息を吐いてどうするのかと疑問に思ったが、それを指摘するとまた美沙のアドバイス講座が始まることになるので黙って見つめる




「好きな人って理央大体すぐ一目惚れするじゃん
ねぇ、忘れたわけじゃないよね?」




可愛らしく怒る声が私の頭に響く
そう言われればそうだった気もしてくる

1ヶ月前はバイト先の先輩、2ヶ月前は陸上部のエース、3ヶ月前は同中の男友達と大体1ヶ月ペースで好きな人が変わっていた

あれ?そんなに好きな人変わっていたっけ?と思うのだけどいつも持ち歩いている日記帳を見ると大体1ヶ月ペースで好きな人が変わっているし何より隣にいる美沙がそう証言しているのだから確かにそうなのだろう

思い返してみれば美沙と出会う前から好きな人も彼氏もコロコロと変わっていた気もする。
私の恋はきっと熱しやすく冷めやすいのかもしれない

中学校のときから何かと恋してばかりで高校生になってからも入学式の時生徒代表として挨拶をしていた生徒会長に一目惚れしたがすぐに冷め、出会ったばかりの美沙にある意味凄いと褒められた記憶がある




「で?次は誰に恋したの?理央がそんなこと聞くんだからどうせ変な恋でもして悩んでるんでしょう?」





前の席に足を投げ出して座り勝手に他人のスクールバックを漁り始める美沙、前の席の男子が買ってきたであろうポッキーを悪気もなく当たり前のように食べ始める

顔が良いと多少好き勝手しても大目に見られるのだからズルいものだ。かという私もいつも美沙に釣られ、あーん。と言われて差し出されたポッキーを食べてしまうのだから同罪だろう

甘いのに少しだけ苦味のあるチョコはまるで悩んでいる私の妄想と現実みたいで、なのに軽くてすぐになくなってしまうところまで私の恋みたい、きっと今回もすぐに心変わりしてしまうのかもしれないけれど何となく今回は本気な気がした






「んー、なんて言うんだろ……。
じゃあ美沙は叶わない恋をしたことある?」

「ない、美沙の場合欲しいものなんて大体簡単に手に入るもんね〜」

「だよねぇ、美沙はそういう苦労したこと無さそうだもん、だから美沙に相談しても意味無いかも」

「なにそれ〜!理央、絶対美沙のこと馬鹿にしてるでしょ〜?!もう良い!理央なんて知らない!馬鹿!」





ぷんぷん、という言葉が似合いそうなほど頬を膨らませて怒る美沙に、ごめんね。と笑うとまた少し拗ねられた

だって叶わない恋なんてしたのは初めてではないにしろ会えない距離にいる人に恋したことは無かった

なのに正解も答えも途中式もないこの問題をどう解くかなんて美沙に相談したところで意味が無いし私にも分からないしどうしたら良いのかさえも分からなかった

ただ朝のHRが始まるチャイムが鳴ったとき前の席の男子が残骸になったポッキーの袋を見て怒っていたのだけれど通り掛かった美沙に、お菓子ありがとう〜!と言われにやけていたのは事実だった