知らないあの人

「うっせ。泣いてないわ、ばか。」

「泣いてるくせに。私と離れるのが寂しいんでしょ。」

「うん、寂しいよ。」

今まで笑ってたのに急に真剣な顔で言う。

「私も、寂しい。すごい寂しい。」

そんな顔、しないでよ。

「また会えるといいな、俺ら。」

「そうだね。」

「うん、じゃ、またな。」

「うん。ばいばい、直人君。今日、すごいかっこよかったよ。」

「今日じゃなくて、いつもでしょ。」

冗談っぽく言う直人君。

「そうだね、いつも。」

笑いながら言う。

「元気でな、陽羽。」

「直人君も、元気でね。」

直人君は引っ越して行った。私は思いも伝えられないままだった。
あれが私の初恋だった。



そんな初恋の相手が。

だから、顔を見たことがあったんだ。
だから、男の子の中学校の名前を聞いたことがあったんだ。

「なんか見たことあるなって思ったんだ。」

「私も思ったよ。見たことあるなって。」