「なんなんですか、あの警備員!」


「落ち着きなさい…、気持ちは分かるけど。」



なにやらかなりご立腹の岐微浜を、左隈は苦笑しながらもよしよしと頭を撫でる。



「どうした?」


「かなり荒れてるな。」



喝宥と克治は、二ヶ月前に起きた戟陶緞漱(ホコスエ ダンゾウ)と戟陶鴻雑(ホコスエ コウゾウ)の双子の兄弟が、クロドクシボグモというタランチュラの一種の毒で死亡した件で、二人が所属していたODA政府開発援助を調べていた。


なんでもグリーンカードまで取得し現地人と他国との仲介を熱心にしていたのだが、現地の闇市で手に入れたメルドニウムを横流しし、複数の他国企業との利権が絡んだ非常に複雑な案件の資料を用意していた。



いや、当局に渡す為に用意させられていたと言った方が正しいか。


それも終わり、と一息ついた時に二人が帰ってきたのだ。



「酒飲んで死んだ、あの?」


「あの、よ。」



あの…梺屓賤恭のことだ。



「窃盗していた上に、病死したソープ嬢を妊娠させていたんですよ!それに、無理矢理堕胎までさせて。男の風上に置けないです!」



梺屓賤恭は、実に卑しい性格であった。