「お預けと言うのはなしですからね」

「お、お預けって…」

私は苦笑いをすることしかできなかった。

「逃げるのもなしですからね」

「もう逃げませんよ」

私は藤岡さんを見つめると、
「あなたが好きなんですから」
と、言った。

言われた藤岡さんは眼鏡越しの瞳を細めると、
「僕もあなたのことが好きです」

クイッと、指で私のあごをあげた。

彼の顔が近づいてきた瞬間、私は目を閉じた。

「――ッ…」

彼の唇が、私の唇と重なった。

重なっているその唇の甘さに、私は酔いしれた。

☆★END☆★