くちづけ~年上店長の甘い誘惑~

藤岡さんが私の名前を知っていたことに戸惑っていたら、
「覚えていませんか?

あの夜、あなたは自分の名前をフルネームで名乗ったんですよ」

藤岡さんが言った。

「えっ、はい…?」

あの夜とかフルネームで名乗ったって、いつのことを言っているんですか?

「全く身に覚えがないんですけれど…」

そもそも、あなたが言っているあの夜ってどう言う意味なんですか?

「キスをすれば思い出すかと思ったのですけれど、効果はなかったみたいですね」

藤岡さんはそう言うと、あごに触れていたその手を離した。

キスをすればって、そんな理由で私にキスをしたんですか!?

「――お、思い出す訳ないじゃないですか!」

あんまりな理由にカッとなって、怒鳴るように藤岡さんに言った。