無神経さにため息をつく。


「最近調子いいんだろう・・・その、プライベートで。」


「だから、〝婚約者を奪った妹を労りに行けるだろう〟て言いたい訳?」


「いや、そうじゃないけど。」


「そう言ってるようにしか訊こえないわよ。」


「おい、月依!」


 去って行く後ろ姿につい名前で声を掛けてしまう。


「気安く名前呼ばないで!!」


 イライラしながらオフィスに戻った。


 》 》


 私には、新たな角でが待っていた。
 2人の夢を叶え2人で気兼ねなく暮らしてゆくと言う細やかな倖せを私は大切にしていた。

 誰に何を言われても私は、彼だけを見ることを誓っていた。

 だからこそ過去になんて触れたくなかった。


 《 《


「おはようございます。」


 車に乗り込み律儀な挨拶をする。


「おはよう、燵夜。」


「おはようございます、燵夜様。」


 運転手も律儀に返す。


「大学への申請は、終わったか?」


「はい、経済学科には、すぐ行けるそうです。」


「そうか。成績がいいと色々融通が利くな。」


 いつの間にか入手した成績表を見ながら告げる。