「やめて下さい。彼女は、関係ありません。」
「いいや、関係大有りだな。彼女に絵の才能でも褒められたのか?くだらない。お前がコンクール後に戻って来るのなら彼女もあのバーもそっとしておいてやる。」
提案ではなくすでに決定事項だった。
「あなたは、そうやっていつでも力で人を従わせていますけど俺は嫌いです。」
「お前に好かれたいとは思っていない。会社のために帰ってくるのか訊いている。」
「〝会社〟じゃなくて自分のためじゃないですか。」
「どうするんだ?経営学を学ぶ気になるのか?それともあの女と惨めに暮らすのか。」
「彼女には、手を出さないで下さい。俺から話しをします。」
「そうか。なら、修復不可能な別れ方をするんだな。それが彼女への優しさだぞ。」
「コンクールが終わったらきちんと話しをします。それまで待っていて下さい。」
苦渋の決断だった。
愛する人とつい先日誓いを立てたのに結局は、父の思い通りに動く自分がいた。
「まだまだお前は、若いんだ。あんなごじらせた女じゃなくても引く手数多だ。コンクールが終わったら迎えをやるからな。」
