「ちゃんと、食べてあげたじゃない。」
「なんて口きくの。」
長年の娘の看病疲れからか母親は、ヒステリックになっていた。
「あの子の茶番に付き合ったんだからいいでしょ。私明日も早いの。」
「なんて冷たい子なの。」
睨み付けて病室に戻って行った。
「冷たい親がよく言う。」
「月依ちゃん。明日から冬休みでしょう?」
「そうですよ。」
「それなのに朝早いの?」
「私受験生です。」
「ああ、そうだよね。どこ受験するの?」
「時雨崎(シグレザキ)学園です。」
「えっ、全寮制の名門校?」
「そうです。こんな生活から早く脱出しなくちゃ。私先生が言った通りに〝病気〟みたいだから。」
ようやく振り向いてにっこりと笑いかけた。
「月依ちゃん・・・・・・。助けは、要る?」
「助けてくれるんですか?」
闇に満ちた瞳を向ける。
「もちろん。」
「なら、・・・くれますか?」
耳元で囁く。
「月依ちゃん・・・・・・。」
囁かれた瞬間に目を見開き青ざめてしまう。黒い笑みを向けて到着したエレベーターに少女は、乗って行ってしまった。
