自分の放った一言で泣かせたのだと気が付いて困る。
「こっち見ないで。」
腕からは逃れようとしないが顔を背ける。
人前で泣くなんて出来なかった。
頑張って来た自分が甘やかされてきた妹に〝負けた〟なんて思われたくなかった。
哀れみを向けられたくもなかった。
だから毅然として仕事をこなし彼にも一同僚の立場を崩さず接してきた。
泣かずにきたのに・・・・・・。
「月依さん、ごめんね。俺が余計なこと言ったから。」
「こっち見ないで。」
「ごめんね、本当にごめん。」
思わぬ展開に戸惑ってしまう。
「(ああ、早く泣き止まないと。困らせてる。)」
しかし溢れ出した感情は、なかなか消えてくれない。フとベランダを見るとこれ見よがしに雪が降っている。
「雪だね」
視線の先に気が付いたのか青年がそう呟いた。
「雪は・・・・・・嫌いよ。」
「え?」
「嫌いなの。」
雪の日は良いことがない。
現に年下の子に抱かれみっともなく泣いている。
「カーテン、閉めようか?」
「ふふ、いい子だね。」
素直な反応を見せる青年が眩しく見えた。
