もう愛することなど、トキメクくとなどないと思っていた。
 独りで居ようと思っていた。


 《 《


「おーい、青年。」


 いつの間にか日常に溶け込み存在が当たり前になった青年がリビングのコタツで眠っている。


「ふふ、いつもと立場逆ね。」


 洗濯機を回しゴミを片付け青年を起こさないように掃除をし食事を作る。
 在宅ワークを初めて半月を過ぎようとしてるのに仕事の電話は、無い。代わりに妹夫婦のメールとメッセージは、山ほどスマホにやって来た。


「そろそろ出社しないと・・・。」


 スマホを手にベランダに出る。


「社長、ご無沙汰しています。ええ。体調は、大丈夫です。そろそろ出社しようと思いまして。」


「そうか。良かった、君も即戦力だからね。」


「ありがとうございます。来週から職場に戻ります。」


「解ったよ。」


「では。」


 電話を切り深呼吸する。冬の清々しい空気が全身に回る。


「おはよう。」


 背後に立たれることも子どものように抱き付かれるのも慣れてしまった。


「おはよう。今日は、私がごはん作ったわ。」