妹の帰る靴音を訊いてため息をつく。
「お茶、入ったよ。」
「ありがとう。」
振り返るとトレーを持った青年が居た。
「ねえ、もう帰っても大丈夫よ。うちセキュリティーしっかりしてるし。」
「心配だから。」
真剣な眼差しで言われ返す言葉を見失う。
事件の後なぜかマスターによってこのアルバイトくんに世話と監視を任せた。退院の日迎えに来てくれたお礼にとお茶を出したがそれからずっと帰らず居座っている。
「燵夜くんも人がいいんだから。」
「気にしないで何でも任せて下さい。」
〝男として〟見られていないことは解っていたが傍に居たかった。
「少し寝ようかな。」
「ごゆっくり。」
部屋に帰るのを見届けてからスマホの着信にようやく出る。
「次こんなことをしたら許しませんから。」
それだけ告げて電話を切った。
》 》
知らないことは、たくさんあった。
でも私は、何でも知ってる気になっていた。
あの頃の私は…まだまだ若かったということだ・・・・・・。
