「どっち?」
「え?」
「どっちに殴られたの?」
「燵夜くん・・・?」
なぜか凄い怒りが青年を包んでいた。
「ねえ、月依さん。どっちのオッサン?」
「燵夜くん。落ち着いて・・・っ、今、しかるべき・・・人、たち来るから・・・・・・。」
服の裾を握って制裁を止める。
「解った・・・。傷見せて。」
「口の中、切った。」
「本当だ。あっ、来たみたい。」
傷口を見てもらっているとサイレンの音が鳴り響く。
大人しく2人は、連行されて行った。
「救急車に同乗して頂きたいのですが。」
「待って下さい。」
「あなたは、乗れませんか?」
「いま、上司が来ます。」
「解りました。」
「〝上司〟って。」
「マスターに電話しておきました。マスターの方が安心でしょ?俺より。」
「あのねぇ、なんか勘違いしてない?常連と店主の関係なだけよ。」
「俺よりは、月依さんを知る人ってことで呼んだんです。」
サラリとかわし爽やかな笑顔を向けられると何も言えない。
「あ、来ました。マスターすぐそこなのに遅いですよ。」
「悪い悪い。閉店準備が手こずって。」
