「顔色悪いな。」
「何よ、みんなして!」
「誰かにも言われたのか?」
グラスを拭きながら指摘する。
「年末で商社は、忙しいの。いつもの倍働いてるから寝不足なの!」
ムキになって答える。
「そんなにムキになって・・・・・・。」
「何そのため息!!」
「全く相変わらず嘘が下手だな・・・と思って。」
「嘘じゃない、本当に寝不足なんだから!!」
もう1度強く言ってしまう。
「はいはい。仕事大変だなあ。」
「あっ、馬鹿にしてる!」
「してない、してない。」
「もう!」
「すみませんね、みなさん。やかましいのが居て。」
サラリと他の客にフォローを入れる。
「マスターも子守り上手だね。」
「それ程でも。」
常連たちと笑い合うマスターを恨めしく見つめる。
「(子ども扱いしたわね。)
お酒!!」
「だから、お前に飲ませる酒はない。」
「ああそう。そうですか。いいわよ、ここ以外でもお酒なんかいくらでも飲めるんだから!!」
まるで子どもの台詞のように叫ぶとコートを持って店を出た。
