「先生、心配なんだよ。」
「何故ですか?私病気じゃないですよ。」
「ううん。月依ちゃんは、ちょっと病気かな。」
医師の一言に衝撃を受けた。
「病・・・気?」
「うん。お父さんとお母さん瑠々ちゃんに付きっきりで〝寂しくない〟?」
同じ目線に身を屈めて真っ直ぐに瞳を見つめて問われる。胸の奥がじんわりと痛みが走る。
「〝寂しく〟、なんてありません。」
答える声が言葉が喉に痞(つか)える。
「本当に?今日は、誕生日だったよね?いつもいつもお祝いしてもらってる?」
核心を突いたいい質問だった。かれこれ妹を授かってからまともな誕生日などなかった。いや、皆無だった。
しかしそれに気が付いたら負けてしまう気がしていた。 〝寂しい〟なんて認めてしまったらもう、戻れない。
解っていた。胸の奥の痛みは、自分が葬り去った渇望の感情たちの悲鳴。
「平気・・・・・・。
(それ以上踏み込まないで・・・・・・。)」
本を持ち部屋を出ようとする腕を掴まれた。
「月依ちゃん、ちゃんとご両親に言わなくちゃ。君が〝寂しい〟んだって。このままじゃ本当に病気になってしまうよ。」
