屈託のない人懐っこい笑顔を向けられて眩しく感じる。
「独身女が1人でバー通いとか思ってた?」
「まさか。いつも端の席に座るから俺気が付いたら付くようにしてたんですよ。」
少しムキになった声が返ってきた。
「そうだったんだ。あそこは、私の唯一行く所なの。」
しっかり話すのがほぼ初めてかもしれないのに会話が弾んだ。
「あの…いつも〝るい〟って呼ばれてますけど、本当は、なんて名前なんですか?」
「えっ?」
思いもよらない質問に戸惑う。
「すみません。突然こんな男に教えたくないですよね。」
失敗したと思って慌てている青年が微笑ましかった。
「ううん。久しぶりに訊かれたから一瞬驚いちゃって。君が思うほど遊び人じゃないからね~男の子に名前訊いてもらえるなんて。」
「俺〝るい〟さんが遊び人だなんて思ってません!」
「あはは、ありがとう。」
力一杯の否定が〝凄く〟嬉しかった。
「改めまして、若狭 月依。商社勤務のこれでもエリートキャリアウーマンよ。
(自分で言ってて恥ずかしい自己紹介だわ。)」
