「あの・・・月依さんには、どう償ったらいいでしょう。」
重たい話題を自ら振った。
「償いなんて要らないよ。」
「えっ、でも・・・婚約破棄した訳ですし。」
「いいのよ。妹想いの子だから祝福してくれるわよ。ねぇ、そうよね月依。」
「もちろん。お父さんとお母さんが認めるなら文句ない。」
人形のように与えられた台詞のように言うのを見て家族のことを訊いた夜を思い出した。
「さあ、お祝いよ。」
「準備すねるね。」
スッとキッチンに姿を消す。後を追いたかったが席を中座する訳にもいかず追えなかった。
「私も行ってくるわ。あまり飲み過ぎないでね、あなた。」
「解った解った。」
妻の小言を笑って返し酒を啜る。
「あの、ちょっとお手洗いに。」
理由をつけて席を立ち道すがらのキッチンで足を止める。
「なんであなたまで来たの?2人だけで良かったのに。」
「ごめんね、気が利かなくて。」
「本当にね。結婚式で〝何か〟企んでるの?」
「ちょっと、自分の結婚式を妹に譲ったのにそんな言い方しかないの?」
「だっておかしいでしょう。」
