「こんばんは。初めまして。」
「まあまあ、ようこそ。寒いでしょう中に入って。」
「お邪魔します。」
靴を脱ぎ婚約者の後ろを歩く。
「あら、あなたも居たの。」
冷たい予想通りの反応。
「話しが複雑だから。」
「そう。まあ、入りなさい。」
母親は、上がるまで待っていてくれることもなく2人と行ってしまう。
「あなた~瑠々が婚約者の方を連れて来てくれたわよ。」
耳障りな程に明るい声だった。
「初めまして、鈴村 悠葵と言います。本来なら月依さんとの結婚のご挨拶に伺うはずだったのですが…瑠々さんと関係を持ち子どもが出来ました。責任を果たしたいので瑠々さんとの結婚をお許し下さい。」
リビングのガラス戸越しに頭を下げるのを見て吐き気に襲われた。あれを横で見守るのは、自分だったはずだ。
「構わないよ。倖せにしてもらえるなら。」
「もちろんです。」
「良かったなあ、瑠々。彼は、エリート商社マンだから生活は安泰だ。」
「本当におめでとう。」
両親は、大喜びだった。ようやく違和感を覚えた。
