しかし私は、2人を倖せな結婚式に送り出したい訳ではなかった。
本来なら〝倖せ〟一色だろうがこの結婚式には仕事関係者、妹の学友がやって来て私がするはずだった結婚式をそのまま引き継いだ形で行われる。
晒し者になるなら2人も一緒がいい。
婚約者の妹に手を出して孕ませた挙げ句に婚約者と執り行うはずの結婚式をそのまま利用する最低の新郎。
大人しく可愛らしい顔をして毒蛇のように姉の婚約者を寝取りまんまと子を孕み結婚に漕ぎ着けた新婦。
私には、その肩書きで十分だった。これからも同じ職場で仕事をする上で確実に私だけが噂の標的になる。
でも、この結婚式で対等になる。
棄てて奪った者と棄てられ奪われた者が同じ立ち位置になるのだ。
両親の反応は、想像通りで笑いしか込み上げなかった。
《 《
何年ぶりかの帰宅。
「ただいま。」
妹の一言で我に返り気合いを入れ直す。
「お帰りなさい、瑠々。」
自分には、一度も向けられなかった母親の笑顔に黒い感情が沸き上がる。
「お母さん。こちらが鈴村 悠葵さん。」
自分がやるはずだった紹介を妹がする。
