「マスター。俺、帰ります。」
「気を付けて。」
何事もなかったことを安堵して青年を見送った。
外に出ると綺麗満月が出ていた。
「月依さん・・・」
愛おしく名前を呼んでも今は、届かない。
》 》
目覚める。
眠る。そして、目覚める・・・。
あとどれくらいこの無機質な繰り返しをすれば楽になれるのだろうか。
私の周りには、何があっただろう。
確かに掴んだモノも砂のように握った拳からサラサラと失せていった。
薄情にも程がある。
とても叔父に似ている気がした。気が付くときにはもう遙か彼方にソレがあって走っても手を伸ばしてもどんな代償を申し出たとしても手に戻ることなどない。
なんと愚かな性格だろう。
引き留め縋る術さえ持ち合わせない我が身が今になってとても哀れに映る。
〝我が儘〟は、どうやってつけばいいのか…それさえも解らない。
ただ、あなたに〝逢いたい〟と思うことが〝我が儘〟ならいいのに。
《 《
「っ、ゲホッ。」
ツバを飲み込むだけでムセ込んでしまった。
「若狭さん・・・」
「最悪・・・」
