「あの・・・鈴村、悠葵・・・・・・さんですか?」
隣の席には、彼女を傷付けた男が居た。
「え・・・何処かでお逢いしましたか?」
のんきな答えが返ってくる。
「俺、月依さんと付き合っています。」
何故か過去形にすることが出来なかった。
「えっ!?もしかして君が?」
「そうです。悪いですか?」
「いや、悪くないよ。てか、俺が口出し出来る筋合いじゃないからさ・・・。」
ヘラヘラと笑ってグラスを傾ける。
「じゃあ、月依のこと知ってるんだな。」
「もちろんです。」
〝知らない〟とも〝別れた〟とも言いたくなんてなかった。
「なら、安心だな。これからもあいつを支えてやってくれ。」
「当たり前です。あなたに言われたくありません。」
「だよな。でも、安心した。あいつにも身体を凭<モタ>れることが出来る人間がいて・・・。」
寂しそうにそう呟かれて迫り上がって来た感情が薄れてしまった。
「倖せにしてやってくれ。」
「っ!!」
涙を流されてしまい本当に毒気が抜かれてしまった。
心底悔いているのを容認してしまいそうだった。
