雪の日に祝福を…。

  


「気をつけて。」


 医師と看護師に挨拶して部屋を出た。

 外は、綺麗な夕暮れだった。立ち止まり見上げた。


「若狭さん。」


「はい?」


「アパート、決まっているのよね?」


 看護師が不思議な心配をしてくれた。


「はい。独身者用の公営住宅に入ります。」


 病気のことを考え町の公営住宅に新居を構えた。


「送りましょうか?」


「いいえ。歩いて帰れます。」


「そう。気をつけてね。」


「ありがとうございます。さようなら。」


 頭を下げて家路に着く。

 歩いて帰るのは、体力作り。そしてその日をあっさり迎えたいから。


「若狭 月依さんかしら?」


「はい・・・。」


 部屋に着くと見知らぬ年配の女性が居た。


「私、保健師の広瀬です。病気のこととか色々訊いておきたくて、いいかしら?」


「ええ、どうぞ。」


 荷ほどきもしていない部屋に上げる。


「引っ越しで忙しいのにごめんなさいね。」


「いいえ、構いません。」


「病気が進行したら入院するのかしら?」


「いいえ、ここに居ます。町が嫌ならやめますが。」