雪の日に祝福を…。

  


「いいえ。先生でいいのですが、私はこの土地で死ぬのが嫌なんです。」


「そうですか・・・。あちらの先生には私からきちんと話しを通します。何かありましたら直ぐに連絡を下さい。」


「解りました。お世話になりました。」


 主治医にお礼を告げて診察室を出る。

 仕事を辞めて、マンションを引き払い、病院を地方に定めて居なくなる準備を整えた。


「駅までお願いします。」


 独りの病魔との生活が始まる。


 駅に着き最寄りの駅まで揺られる。その後バスに揺られ小さな町に着いた。
 トランクと小さな手提げしか無い。
 直ぐに病院へと向かう。


「こんにちは。」


「こんにちは。保険証をお願いします。」


「はい。これもお願いします。」


 受け付けに主治医の手紙を差し出す。


「お預かりします。すぐお呼びしますからかけてお待ち下さい。」


 小さな待合室のソファーに腰掛ける。保健室のような病院の佇まいに少し緊張がほぐれた。


「若狭さん。どうぞ。」


「はい。」


 診察室も昔ながらの雰囲気だった。


「緩和ケアだね。」


「はい。宜しくお願いします。」