「違うんだ・・・・・・。すまないっ!!」


「何?」


 ザワリと嫌な予感が込み上げる。


「結婚式、取りやめにして欲しいんだ。」


「は?」


 晴天の霹靂とは、まさに今のこの状況だろう。


「どうしたの?」


「訳は、言えない。月依が出した式場の金は、俺が弁償する。婚約破棄の慰謝料も出すから。」


 平謝りの婚約者をただ呆然と見つめるしか出来ない。


「コーヒーお待たせしました。」


 場の空気を読まない店員の声で我に返った月依は、届いたコーヒーを婚約者にぶちまけた。


「熱っ!!」


 叫んでアタフタする婚約者のワイシャツがコーヒー色に染まるのを眺めていた。


「何するんだよ。」


 店員がくれた濡れタオルで顔やワイシャツを拭きながら叫ぶ。


「こっちの台詞よっ!!」


 一言叫んでカフェを走り去る。


 走り人混みの大通りに出た。立ち止まり見上げると予報通りの雪が重苦しい空から落ちてきた。
 今すぐ泣いてしまいたっかた。


 《 《


 人生最大の裏切りだった。
 1週間後の誕生日が初めて輝く日になるハズだった・・・・・・。