縁側で恋を始めましょう



残念に思っていると、おばさんは「あがって」とリビングに通してくれた。
久しぶりに訪ねた暁の実家は、模様替えはしつつもその匂いや空気は昔のままでどこかホッとする。
よく遊んだな、と懐かしくなった。

「暁を訪ねてきたの?」
「あ、はい。その……暁が小説家になったって聞いて」
「あら、そうだったの。ついに聞いたのね。今更というか、長かったわね」

そういって暁の母はうふふと楽しそうに笑った。
ということは、やはり暁の両親も私に言うなって、口止めされていたのだろうか。

「暁が私に言うなって言ったんですか?」
「そうなの。デビューした時に、紗希ちゃんには絶対に言うなって言われて」
「どうして?」
「紗希ちゃんには自分の口で言いたいからって」

そうだったのか。でも結局三年も何も言ってくれなかったけどね。