「ごめん。でも、紗希だって」
「私?」
「同棲中の幼馴染はどうなのよ」
ニヤリと笑う香苗に反論しようと口を開くと、後ろから驚くような声が聞こえた。
「倉本が同棲? ついに彼氏でも出来たのか?」
その声に振り向くと、これまた同期の笹本祥平が目を丸くしていた。
スーツの上着を片手に持ち、塩顔で短髪の爽やかな雰囲気の彼は私たちの横に立って、一緒にエントランスでエレベーターを待つ。
営業課の笹本は、忙しいながらも私や香苗とよく飲みに行く飲み友達だ。
因みに、私は企画課、香苗は広報課である。
入社した時から妙に馬が合い、同期内でも特にこの三人でいることが多かった。
香苗には先日、飲んだ時に暁のことを話していたが笹本にはまだ話していなかったため当然の反応だろう。
「だから、同棲じゃなくて同居! 暁は弟みたいなもんで、そんなんじゃないってば」
私がそう反論すると、香苗が「でもー」とニヤニヤしながら言う。



