むしろあれは夢だった? いやいや、夢ならそれはそれでまずい。欲求不満すぎる。
しかも暁だって何のつもりであんな……。
あんな甘いキス……。勘違いしてしまうではないか……。

「ダメだ。このままだと本当に遅刻する」

若干、二日酔いのする頭を無理やり起こして着替えに移った。
どんな顔をしたらいいのだと迷いながらも部屋から出てリビングへ行くと、暁が朝食を机に用意して待っていた。

「おはよう。早く食べないと遅刻するよ」

振り返ってそう言う暁はいたっていつも通りだ。

「あぁ、うん」

妙に緊張した気持ちで席に着くが、暁は昨日のことは一切触れてこない。
いつものように新聞を読んだりテレビを見たりして朝食を食べている。
まるでなにもなかったかのようだ。