想像よりも筋肉質で逞しい腕が私を抱き止め、ドキッとする。と、同時に意外とその腕が心地いいことに気が付く。
暁の匂いに妙に安心感を覚えた。
そのままウトウト寝てしまいたいくらいだ。
「いいえ、いつものことだから。君のことは倉本から聞いているよ。小説書いているんだってね。今度俺にも読ませてほしいな」
笹本は穏やかな声で言うが、見上げた暁の表情は冷めている。
「たいしたものではないので。では」
私を抱えてリビングに戻ろうとした時、後ろから笹本が暁を呼び止めた。
「倉本が暁君を弟の様で可愛いと話していたよ。仲がいいんだね。じゃぁ倉本、また明日。遅刻するなよ」
「はいはい」
そう言って止めていたタクシーに乗って帰って行った。ガチャっと玄関のカギを閉めた暁の腕に一瞬力が入る。



