「笹本―、タクシー乗りたい」
「わかっているから、乗って。送るからほら、座って」
そう言われて、笹本は私をタクシーに乗せる。意識はある程度保っていられるが、なんせ足元が不安定だ。
お酒は強い方だが、今日はちょっと飲み過ぎたなと一瞬だけ反省する。
「眠いなら寝てていいぞ」
「お、優しいねー、笹本君は」
笹本の腕をつんつんと突っつく。
「茶化すな。俺んちに連れていかれたいか?」
「なぁに、バカなことを言っているんだか」
ケタケタと笑い、それからすぐにタクシーの窓に頭を乗せてウトウトしだす。
隣で笹本がため息をついた気がしたが、気のせいの様にも感じられた。
しばらくすると、肩を揺さぶられて目が覚める。
「おい起きろ、着いたぞ」
「あぁ、はい」
そう耳元で声を掛けられ、半覚醒のままタクシーから引きずり出された。笹本に支えられて見慣れた門をくぐる。
「えっと、鍵、鍵……」
暁はもう寝ただろうかと思いながら鞄から鍵を出そうとすると、先に玄関がガラガラと開いた。



