笹本の姿が路地を曲がって見えなくなると、暁はグイッと私の腕を引っ張って家の中へと入って行った。
玄関に放り込まれ、鍵を閉める音に振り返るとその視界を暁の身体で覆われた。
抱き締められて心臓が跳ねあがり、一気に体温が上昇する。
「笹本さんの所なんかに行かせない」
吐き出すように呟いて、抱きしめる腕に力を入れた。
少し苦しい。
でも、それがとてつもなく嬉しかった。
聞きたいことは山ほどある。
でも今は……。
「行かないよ。行くわけないでしょう……」
「紗希」
私は震える声で答え、暁の広い背中に腕を回した。
暁がハッとする。



